?「日本はバブル期に比べて、デザイン文化のレベルが驚くほどに面白みを増している」。著者の唐突な断言に、多くの読者は戸惑うに違いない。当然のことだろう。バブルが崩壊したということは、イコール、デザインにも今までほどの投資ができなくなったということだ。いきおい、多くのアイデアが実現の機会を逸し、デザインもつまらなくなってしまったのではないか、と。だが皮肉にも資金難に直面したことによって、クリエーターはより知恵を絞るようになり、一方消費者はより目が肥えて、本当に必要なものを厳しく見極めるようになった。「無印良品」のようなブランドに一層注目が集まるようになったのも、バブル崩壊後のデザインの見直し抜きには考えられない。著者が注目しているのは、まさしくこの「災いを転じて福となす」とでも呼ぶべき事態なのだ。 ???本書はバブル崩壊後の日本のデザインの良質な作例を数多くピックアップし、多角的に紹介した1冊である。取り上げられているデザイナーは計27組、インテリア、建築、造園などその領域は多岐にわたるが、豊富な図版によって紹介されているその仕事振りには、いずれも自由な雰囲気と遊び心にあふれており、一例を挙げるなら、江戸っ子っぽい「潔さ」を強調する建築家・隈研吾の言葉などは、掲載されている作品のシンプルさなども相俟って、「なるほど!」と膝を打ってしまうこと請け合いだ。 ???著者は現代日本のデザインを「和」「ノーコンセプト」「自由度」という3つのコンセプトによってとらえており、また本書そのものの構成も「WORK」「REST」「PLAY」という3つの便宜的区分によって為されている。いささか単純な気もするが、本書が英語・仏語版も同時に出版される外国人向けの案内書と知ればそれも納得がいく。本書の手際よい見取り図は、彼(女)らにとって未知の世界である現代日本のデザインを知る上で格好の手がかりとなるだろう。(暮沢剛巳)
ビー・エヌ・エヌ新社
リアライジング・デザイン
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